6月•7月の金継ぎ教室 pic up
(インヤンレストさん教室/7月の様子より)
厳しい暑さが続いています。このところ雨降りに当たる日も多かったのですが、梅雨が明けてからは炎天下の移動になり、通ってくださる皆さまには本当に有り難い思いです。
blogでは各教室の様子をお伝えしていますが、今回は小さなコツの紹介をします。作業の参考になれば嬉しいです。
(ソノモノさん教室/小鹿田焼の大皿 裏側の欠けを修理)
欠け埋め作業はヘラの使い方を工夫すると効率が一気に上がります。1センチ四方の欠けでしたら、大体平均して4〜5回くらいは錆漆を乗せては研ぐ、という作業を繰り返すのですが、形が思うようにならなかったり、縁の隅が埋まっていない時がありませんか?
いくつか抑える点があるのですが、まず画像のように、欠けている縁の上部で錆漆をこそげてみてください。その後一旦ヘラを拭い、そのあと下方向へ欠けている際まで塗り伸ばしてみましょう。何度も塗っていると錆漆がうつわとヘラの往復で餅つきのようにペタペタと移動するだけになるので、なるべく塗った後はあまり触れないように。作業に慣れてくると表面を滑らかに整えられるようになりますので、最初は薄く塗り重ねることを意識してみましょう。
(インヤンレストさん教室/LLADRO手の折れ修理)
リヤドロ製お手紙(ハンカチ?)を持つ女の子の手を修理中です。断面が5 mmほど、硬化中は少し手が浮いた状態を保つ必要があったのでしっかりと接着するまで試行錯誤しました。はみ出した麦漆の除去は負荷をかけない程度で止めて、作業中に誤って外れないように少しずつ汚れを落として仕上げへ進んでいます。
断面がわずかだったり、噛み合わせがゆるい時はガラス漆を使ってみてください。ガラス漆は1割ほど接着剤が含まれる漆です。磁器修理でも大変重宝しています。
(アトリエニノンさん教室/弁柄漆塗り→蒔き)
蒔きの作業は金継ぎの中でも一番華やかな作業です。コツコツと積み重ねてきた時間が報われる瞬間でもあるのですが、小さなこぼれがはっきり出てしまうので、一つ一つ問題をクリアしていきましょう。
・下地は滑らかに研ぎができている
・欠けを埋めたところとの境目に余分な錆が付いていない
ことを確認して、足りなければその前の工程まで戻ります。また仕上げ塗りをするときは
・筆に漆を含ませたら、しごいて余分を落とす
・漆は薄くまんべんなく塗る
◎錆の横側も塗り、錆部分を全て隠す
など、気を付ける点が多くあります。特に◎は見落としがちですから、塗り終わったら明るい場所で、うつわを傾けて確認してください。
(自宅教室/古伊万里皿蒔き)
自宅教室では出張教室では時間的に難しい、細かなコツもお伝えしています。
Mさんが一年近く取り組まれたうつわは縁に立ち上がりと輪花(花びら状の縁の形)で、綺麗に整うまで、何度も錆と磨ぎを繰り返しました。仕上げの真鍮粉は消粉タイプで、艶が控えめです。このようなうつわを直す時は
・接合の位置を正確に
・はみ出した余分な錆漆は硬化する前に拭き取る
・耐水ペーパーの番手を細かく使い分ける
・研ぎの時は周辺を必ずマスキングする
など各段階で丁寧に作業を進めてみましょう。
加えて本金や銀の蒔きは出張教室の環境では難しく、自宅教室で対応しています。チャレンジしてみたい方はお声掛けくださいね。
(マダレーナカフェさん教室/午前クラス)
マダレーナカフェさんは出張教室の中でも一番長いのでOBの方も多く、7月の午前クラスでは8割ほどの方が卒業生でした。修理するうつわもご自宅使いはもちろん、親しいご友人や行きつけのお店から頼まれておられる方もいて、バリエーションに富んでいます。
講座はそれぞれのうつわに合わせてアドバイスしていますが、生徒さん同士で助け合ったり、他の方の作業を参考にしたりと情報交換や交流が広がり、地域に愛されている教室に育っています。
そしてマダレーナカフェさんでは9月からの新規ビギナークラスの募集が始まりましたので、お近くでうるし金継ぎを始めてみたい方は是非お問合せくださいね。
問い合わせはマダレーナカフェさんのInstagramまたは直接お店でお尋ねください。(オーナーが基本お一人でお店を切り盛りされており、お電話での対応が遅くなることもあるそうですので、お手数ですがよろしくお願いいたします。)
8月も厳しい暑さが続くようです。どうかご自愛の上お過ごしくださいね。